サブミットした論文の Decision が忘れた頃に届く。
ドキドキしながら1パラグラフ目を流し読みしてまずrejectではないことを確認。
あぁよかった。
Major revision らしいがこれはいけるかも。
レビュアーのコメントを見ながらメールをスクロールしていくが
読んでも
読んでも
読んでも
終わらない。
Associate editor、安定の適当さ。
Reviewer 1、2、3、4…は、4??
Statistical reviewer, うーんキビしいご指摘…
Associate statistical reviewer, 統計レビュアー二人もいる??
レビュアーをつけまくることで有名な胸部心臓外科のジャーナルがあるのだが、こんな感じが多い。もちろんリジェクトされることも結構ある。
査読者の数に関わらず、どのジャーナルでもReviewer response letter を書くのは辛い。
僕にとっては論文掲載までのプロセスの中で1番辛いステップだと思う。
Response letter を書くときの僕なりの心得は:
- レビュアー様は神様だ
- レターを読むだけで(原文を見なくても)完結できる内容にする
- 最速のターンオーバー
もちろん個人のスタイルがあると思うのだが、これは僕なりに試行錯誤しながら上の人に言われたことを取り入れて行っていること。
1.レビュアー様は神様だ

査読する様になってから実感したことだが、論文を読み込んでレビューを書くのは結構時間がかかる。
もちろん新しい発見があって面白いこともあるのだがこれを他の業務の合間に無償でやるのは正直キツい。
なので頑張ってコメントをつけたものに対して著者からの返答が適当だったりコメント無視だったりすると心証が悪くなる。そして査読者も人間なので心証はかなり大事だと思う。
論文の査読プロセスについて、
「科学的研究を評価するためのプロセス自体は科学的ではない」
という論説があるが全くそうだと思う。
オーサーとしてはもちろん論理的な返答をして客観的に判断して直したほうがいいところは修正すべきなのだが、感情のある人間が読んで判断しているということを常に念頭に置くと良いかと。
裁判で陪審員の心証をよくするための努力や工夫をする感じではないだろうか。
僕は数年前まで結構アグレッシブな喧嘩腰のレスポンスを書いていたが、一度 Accept with minor revision の判定が出た次のラウンドで一気に Reject になった経験があり、それ以降かなり気をつける様になった。これは一度きりの経験で今でも理不尽なdecision だと思うのだがまたの機会に。
あとは 2nd revision でインパクトの落ちるシスタージャーナルに送り飛ばされたこともあった。とにかくレビュアーのコメントは、どれだけ的外れで理不尽であっても塾考してできるだけ丁寧な返事をする様にしている。
2. レターを読むだけで(原文を見なくても)完結している内容にする

心証をよくするためにもresponse letter はできるだけ丁寧で見やすいものにする。そして理想は、レターを読むだけで原文を見なくても内容が完結しており、レビュアーが原文から変更点を探さなくても納得できる内容であること。
色やフォントをうまく使い分けてレビュアーが見やすい工夫をするという人もいるが、これはスキルがないと逆効果になることもあると思う。
実際に何を書いているかというと、
- ”Thank you very much for this insightful comment. We agree with this comment that…(指摘された内容の言い回し)”
の様な入りを使ってまずレビュアーのコメントを読み込んで熟考しましたよ、ということを明確にする。
そして反論の場合は
- “While the reviewer’s point is well taken, we believe that… (反論)“
賛成の場合は
- “In response to the reviewer’s comment, we performed additional analyses to demonstrate that… (追加の解析結果)
という短い総論的なものの後に
“Changes” というセクションを作って原文の変更点を明記する。
例えば
- Changes: The methods section of the manuscript now contains the following sentence: ‘(追加の内容)’ (line 100-102)
という感じ。
レビュアーのコメントに対しての返答だけを書いて実際の変更点を明記しない、もしくは原文を修正しないのは避けたい。
レビュアーに対して明確でなかった点は、掲載後も読者にとって不明確だろう、という前提で臨み(おそらくレビュアーもそう受け取られる前提でコメントをつけている)しっかり原文を修正してその旨をレターに明記する。
3. 最速のターンオーバー

そしてできるだけ早いうちにレスポンスを送る。かなりメジャーな追加解析が必要な場合だと難しいが、締め切りが1−2ヶ月後でも僕はその半分くらいで仕上げる勢いで臨む様にしている。
ジャーナルが提示してくる締め切りを締め切りと捉えてゆっくりやるメリットはあまりないと思う。
これも査読者の視点にたったもので、2ヶ月前に査読した論文のことなんてほとんど覚えていない。そうなるとまた内容を読み直さなければいけないので手間がかかるし、僕は手早く返ってくるレスポンスの方が著者や研究グループに対して好印象が抱ける。
著者としての肌感覚では、レスポンスを早く送った論文ほど次のdecision までのインターバルが短いと思う。もちろん早く書けるレスポンスが簡単な内容であることが多いこともあると思うが。
まとめ
論文を書き始めた頃は全く意識していなかったが、レスポンスへのアプローチにもテクニックがあると思う。Revisionまで漕ぎ着けた論文がレスポンスを蔑ろにしてしまったためにお蔵入りしてしまう様な惨劇は避けたいところ。
査読者も血の通った、時には感情に左右される人間であることを意識して丁寧かつスピーディーにレスポンスを送ることができると良いのではないだろうか。
Part 2 は理不尽コメント編
One thought on “Reviewer response letter の書き方: Part 1”